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2025/06/10 00:32 |
そらとあまみ 7
一話目はこちら


自分を追い込むべく早い更新を心がけてみるテスト。十キロバイトに満たないのをさくさくと。

登山ss。オリジナル。非百合。
……非百合。



あえて非百合と明記するのはあくまでジャンル・登山であるため。放っておくと百合妄想し始めるんだ私というバカは。らんゆかカキタイモウソウシタイ


恋愛ものではないので恋愛感情も(基本的に)なく、メインキャラに女しかいないので、非百合としておかないとアリバイ百合のようになってしまうのがなんとなく心苦しいから。
やっぱり百合を書くのなら明確な恋愛感情持たせたいなと思う。夜伽に投稿し始めてからずっと百合専物書きなので、いろいろ思うところがある。


だがしかしちょっと待って欲しい。百合物でないからといって絶対に百合表現を挿入しないというのは果たして正しいのだろうか。
恋愛ものでなくとも恋愛表現を加えることはもちろんある。というかそれは普通のことのように感じる。例えば、そう例えば、少年誌系のバトル漫画なんかは基本ボーイミーツガールかつ主人公とヒロインが明確に存在するわけで、恋愛要素を多々盛り込んでも別に間違っちゃいないわけだ。はっきりとした恋愛をしてがっちりと結び合ったものだといちばん印象に残ってるのが『武装錬金』あたりで、本誌の最終話はラスボスと決着つけるよりもヒーローヒロインの関係を確定させることに費やして(ry

なにが言いたいかっていうとぶっちゃけ恋愛に主軸置くより別のテーマを描いたほうがカップリング性は生きるのではないかという。恋愛物以上に燃えるのではないかという。そういう妙が恋愛にはあるのではないかとかなんかそういう話。
この考えは前々からあって、拙作でがんがんそれを試していたというとこもある。おかげで毎回ネチョ薄(ry


だからですね! 百合物でないからといって百合がないとは限らんわけですよ! むしろ唐突に百合ぶっこんだほうが不意打ち的な萌えみたいのが出てくるんじゃないかとですね! そこであえて非百合と最初に明確に提示しておくわけでですね! 詐欺じゃねこれ? いや非百合ですなに言ってんだ私(ry


だめだ考えまとまらない
夜中につきお見苦しい文章を失礼いたしました
だから非百合です非百合、ゆーて私基本百合書きなのでヘテロもたぶんやらんわという、ていうかメインキャラに男ぶっこむってことまずやらんだろうとなんかそういう、しかし登山物なのに山男はモブだけってなんかいろいろ狂ってンなという


ああもう纏まらない本編どうぞっ!

拍手



 空はバス停から少し離れたところでマルボロを咥えた。風が強く、ライターの火を守るように手をかざさなければならなかった。思いっ切り一口吸って、口を尖らせ、思いっ切り吐いた。機関車のように飛び出た紫煙は、風に散らされてすぐに消えていった。
 ロータリーから開けた視界に、丹沢山塊の稜線が鮮やかなスカイラインを描いている。雲ひとつない清々しいほどの青空。雪を抱いた山稜。
 新宿から電車で一時間程度の距離で、いちばん標高のある蛭ヶ岳――神奈川県最高峰――でさえ千六百と少しの高さしかない。われらが富士山の半分もない。険しさで言えば、日本アルプスなどの峰々とは比べ物にならない。
 
 それでも、山は山だ。そう、確かに山だ。
 一年に一度か二度雪が降れば充分な神奈川でさえ、この時期の丹沢に少し踏み入れば、きちんと積雪している。トレースのついていない場所にはそれなりのラッセルが必要になる。
 それに、丹沢にはその名のとおり沢がある。沢登りという形態の登山は、空がこのあたりに越してきて初めて味わう楽しみだった。陰鬱で暗い谷を遡行し、滝を登攀し、山稜に抜けて頂を目指す、そうしたやり方は子供の頃には知らなかった。蒼天の見えない薄暗さが面白く思えるなど、想像もつかなかったことだ。
 もっとも今日は、日帰りの、のんびりしたハイキング程度しかやらない予定ではあるのだが。
 
 (天見はそろそろかな)
 
 携帯灰皿に煙草の吸殻を押しつけて、ヤッケのポケットにしまう。予想に違わず、階段から天見が下りてきた。空は壁に背中を預けるのをやめ、軽く手を掲げた。
 
 「おはよ」
 天見は礼儀正しくぺこりと頭を下げた。「おはようございます」
 「昨日は寝れた? いきなりで悪かったかな、あたしもちょっと、夜中でテンションおかしかったからさ」
 「いきなり電話したのは私ですから。こちらこそ、ごめんなさい」
 「あたしはいつでも大丈夫だよ。出たくなかったら出ないから、いつでも電話しなさい」フッと緩むように微笑んで、「登りたくなったときに登りたいよね。予定が合えばできるだけ付き合ってあげるからさ」
 
 天見は曖昧に頷いた。
 大倉行きのバスはすぐにやってきた。目的地まで二十分ほど、運賃は二百円きっかり。登山のための交通手段としては、安すぎ、近すぎるくらいだ。アクセスの利便さも、丹沢山域の魅力のひとつではある。下界に程近い、俗っぽさというか、幽玄とは程遠い、ありがたみのなさみたいものも、あるにはあるが。
 バスの最後部に、ザックを隣に置いて座った。もっとも日帰りだから、ザックは小さく、抱えられるくらいの重さしかなかった。平日で乗客も少ない。見たところ登山客は、空と天見ふたりだけだった。
 
 空はいちばん前列の席に座っている老夫婦らしき乗客を見ながら言った。「あたしたちってどういう感じに見えると思う? 姉妹ってほど近い歳じゃないし、親子ほど離れてるとはあんまり思いたくないけど」
 空が三十で天見が十二だった。微妙な年齢差ではあった。天見は困ったように呟いた。「……さあ」
 「五年前くらいまでは十代に見られてたんだけどさ、あたしも。でもいまはこんな髪だし」
 
 空は前髪をいじりながら言った。
 男のように短く刈った髪は白髪のほうが多かった。染めてもいない。雪を散らしたようにも見え、首筋の異様な細さが際立って見えた。いまにも折れそうなほど。
 天見が返答に窮していると、空は苦笑した。「特に意味はないよ。気にしないで」
 
 
 
 間もなく大倉に到着する。
 バスを降りると、冬の冷たい風が吹きつけた。ロータリーに添うようにして、食堂とトイレと駐車場があり、ビジターセンターの向こう側に、大きな――巨大な――橋が架かっていた。丹沢を源流とする水無川は、秦野駅を越えて金目川と合流する。逆に遡行していけば、戸沢を経て、塔ノ岳に繋がる稜線がつくる谷に入り込んでいく。
 その塔ノ岳が今日の目的地だった。
 
 「ここから一気に千メートル登ってくよ。でも、大人の足なら三時間くらいで着いちゃう。雪がついてるのはまあ花立山荘くらいからかな……今年は結構雪深いらしいけど――」
 「三時間で千メートル……?」
 「バカ尾根だからね。ひたすら歩いて登るだけの、シンプルでわかりやすいとこだ」
 
 が、そういう風に言われてみても、天見にはどんなものか見当もつかない。
 このあいだ空と行った、上高地から岳沢まではどのようなものだったかと、思い出そうとしてもうまくイメージできない。
 
 「さあ、準備して。って言っても靴履くだけだね。スパッツ(ゲートル)も」
 「はい」
 「荷物はそれで全部? 貸して」
 「はい……?」
 
 空は天見のザックを押し潰すように丸めると、自分のザックに突っ込んでしまう。天見が眼を瞠るなか、手品かなにかのようにふたつのザックがひとつになる。空はそれをひょいと肩に担ぐ。「軽いもんだ」
 天見はなんとなく心細いような思いで、「あの、私はなにを持っていけば……?」
 「空身でいいよ」
 「……はあ」
 
 そういえば、と天見は思う。このまえのときも、天見の荷物を片っ端からザックから出して、空は自分のザックがぱんぱんに膨らむまで詰め込んでいた。それが当然のことであるかのような顔をして。
 空は経験者で天見は初心者だ。なにからなにまで決定的な差がある。天見にもそのことはちゃんとわかっているし、納得している。
 空は当たりまえのことを当たりまえにやっているだけだ。
 
 (……大人と子供)
 
 親子に見えるにしろ姉妹に見えるにしろ、大人と子供であることには変わりない。庇護する側と庇護される側。
 とくんと胸が軋んだ。
 得体の知れない感覚が心を衝き、荷重をかける。今朝、佐藤と話したからかもしれない。あのときのことをまざまざと思い返したからかもしれない。
 私は子供。それは事実であるにしろ、言い訳の盾にできるひとつのキーワードでもあった。正しい拳の握り方を学んで、それで勉強したことはなんだった? 子供でも大人と同じようにひとを殴れる……
 
 こんなことも考えすぎの妄想なんだろうと思いつつ、天見は声を上げた。「空さん。私に背負わせてくれませんか、それ」
 「なに?」
 「ザック」
 空は少女のようにきょとんとした。「え、ええ?」
 
 ひどく思いがけないことを言われたように感じ、空は天見を見つめた。無表情で無愛想な顔が子供らしい真っ直ぐさでこちらを向いていた。自分の言ったことをとても大切なことのように思っている眼だった。大切……なにが?
 
 (あんまり乗り気じゃないと思ってたけど)
 違うのかな、と思う。昨晩、急に電話してきたことといい、なにかあったのかなといぶかしむ。で、空は真っ直ぐに問いかける。「なにかあった?」
 天見は首を傾げてみせる。「なにがですか」
 
 聞き返すというより、遮断するような声音だった。空は頬を掻く。ふぅん、と思う。鼻を鳴らす。
 他人の心など空にはわからない。まして、子供の心などは。なかでも天見の心となると。まあ、そういう気分なんだろうとひとまず断定し、パスする。別に悪いことでもないのだし。
 
 「そうだね」顎に指先を添えて、一瞬考えてから、「じゃあ、公平にいこうか。一時間ずつ、変わりばんこに背負ってこ。きつくなったらすぐに替わってあげるから、すぐに言いな」
 公平であるということは重要なことだ。それ以上に重要なことが山ほどあるとはいえ。ザックを天見に差し出して、さらに言う。「でも、わりと重いよ? 昨日寝惚けながらパッキングしたから、いろいろと余計なもんまで入ってる。ひょっとしたらこのまえあんたに背負ってもらったザックより、少しきついかもしれない」
 「平気です」
 かたくなに言うもんだ、と空は唇を綻ばせる。「そういうことは終わってから言いな」
 
 ザックを受け取った細い腕が、すっと落ちる。危うく、落としそうになったところで、耐える。
 空はジェスチャーしながら教える。「いったん膝に乗せて、回すようにして担ぐんだ。教えてやったろ、最初のときにさ……」
 
 天見はそうする。肩に重みが食い込み、少女のからだが軋む。背中全体にぴったりと密着する感触が、心を圧迫させる。
 心を鉄にしてその一瞬をやり過ごす。こんなのは大したことない、慣れていないから気圧されているんだと自分に言い聞かせる。毎朝走るようになっても、荷物を背負うことをしていたわけではないから。でもそんなのも言い訳だ。やるって言ったらやるんだ。
 
 「平気です」天見はもう一度言う。
 「そうか。いいことだね」空は適当なことばで返し、天見の頭にぽんと手のひらを置く。
 
 
 
 冬休み、岳沢にテントを張っていたあのとき、天見はシュラフに包まって、暇に飽かせるように空に尋ねたときがある。風が異様に強く、テントの壁を激しく叩いており、眠れなかったのだ。空は上半身だけ起こして、天井の張り綱に引っ掛けた手袋や靴下を片付けていた。空が頭を動かすたびに、ヘッドライトの灯りがひょこひょこと揺れていた。
 
 「空さんはどうして山に登ってるんですか」
 
 あまりにも月並みで、ありふれた問いかけで、空は笑ってしまっていた。風の音に紛れて、そうした笑い声も掠れていたが。ヘッドライトを消すと、真闇が満ちた。世界が急に重みを増したように感じた。
 
 「いや、登ってなかったよ。ここんとこしばらく……五年くらい」
 「でもまた登り始めてるじゃないですか。けっこうすごいとこばかり登ってたって、お母さんに聞きました」
 「すごいとこ、ね」
 
 暗がりが強く、彼女の表情は見えなかったが、声にどこか虚ろな色が混じった。天見は即座に後悔した。「忘れてください」
 「なに言ってるんだい」
 
 空の影が深く俯いたように見えた。懺悔かなにかのように。天見は思わず息を潜めていて、思いがけず、自分の不用意なことばが空になにをもたらしたのか考えてうろたえた。が、空は苦笑しただけだった。影がこちらを向いた。
 
 「“なぜ登るのか”なんて問いかけは存在しないんだよ。あるとすれば、“なぜ登らないのか”って問いかけだけだ」声音はひどく静かだった。風さえ越えていた。「あたしは怖かった。怖かったし、辛かった。やめてくれって感じてた。いい加減にしてくれ、とも。でもそういうのって山に対して思ってたんじゃない。ばかな話だね」
 抽象的で、曖昧な表現だった。空はさらに言った。「逃げたのかもしれないし離れたのかもしれない。あたしには資格がなかった。資格がないことにずっと悩んでた。やっと気づいたのは、山は資格を持ってこいなんてひとことも言ってなかったってことだ。でも、そう。みんなばかばかしいことだよ」
 
 天見には空がなにを言っているのかわからなかった。しかし、空が誤魔化しているようにも嘘をついているようにも思えなかった。そういう声音ではないことだけはわかった。
 伸びてきた指先が額に触れ、そこから張り詰めるようなものが流れ込んできた。空の顔はそれでも見えなかった。
 
 「……これはすごくパーソナルなことなんだ。続きはまた今度話してあげるよ、そういう機会があれば」
 
 それで空は横たわり、寝息を立て始めてしまった。
 不思議だったのは、空が自分を対等の立場にいる者として扱っていたことだった。そういう感覚は初めてだった。両親にしろ教師にしろ、自分の知るあらゆる大人にしろ、自分をそういう目線で見た者などいなかった。
 そうした目で見られて、初めて気づいた。私は私の世界全部からずっと侮られ続けていた。
 いや……そうした感覚も結局は、私が私を侮っているだけだからなのかもしれない。それだけの話なのかもしれない。だから……でも……だけど……つまり。そこで過度の疲労から、墜ちるように意識が途切れた。眠りの深い狭間に誘われ、沈んでいった。
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2012/11/08 00:10 | Comments(0) | SS

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