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2025/02/08 02:00 |
そらとあまみ 38
オリジナル。登山・日常・微百合・ぐだぐだss。


なんだかんだで500kb越えつつあるのであった。
とはいっても、せいれ☆ん(INTRO+本編)と闇黒片全章がどちらも600kbなので私としてはまだまだなわけでですね(白目
見やすく纏めてピクシブにぶっこもうかしら。あそこ二次創作前提って印象があってオリジナル投稿しにくいんだよなあ……

お金がないならフリーゲームやればいいじゃない、ということで気になっていたざくざくアクターズをプレイしたわけですが。
最初に仲間になるのがハーピー娘だった時点でもう私の大勝利が確定したようなものなのであった。くそっなにが偽天使だよどう見ても真天使じゃねえかっ……!
そんな私に追い討ちをかけるように竜人・悪魔っ娘・妖精とかね。もうね。くっそ漢前な女の子たちがね。なんだよ二章のラスト久し振りに燃えちまったよチクショウ。ローズマリーの姐御が非常に姐御で大満足です私。これでまだ未完成かよ……こんな清々しい敗北感は久し振りだ……!

そしてアナンタさんにまた会いたくなっておもむろにらんダンを起動する私。今度こそアイテムコンプ目指すか……モンハン4発売までに……!


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 四月も半ばになると、神奈川は暑いのと寒いのが入り混じる。日ごとに、厚着か薄着か迷うのは、この時期ならではの悩みだろう。日によっては汗ばんだりもするし夜明けは冬ほどに冷たい。
 動いていれば暑くなると判断し、それほどレイヤーを重ねてはいなかった。しかし、バスを降りると、急に冷え込んだように思われる。天見は鼻をひくつかせて山の匂いを嗅ごうとした。まだはやいと自分でわかっている。
 松葉沢沿いに山を目指す。
 この近辺は蛍の里だという。天見は本物の蛍の光は見たことがない。
 バイパスの橋をくぐり、石橋を渡り、階段を登って、林道に出る。宮ヶ瀬湖方面の、なだらかな稜線がくすんで見える。振り返ると半原の町が物静かに佇んでいる。まるで田舎だ。人気はなく、あたりは静かで、ハイカーの気配もしない。天見の沈黙がそのまま世界の静寂となる。かすかに聞こえてくる車のエンジン音も、雑音のなかに消えて遠い。

 天見は深呼吸をした。(――すごく久し振りって感じがする。登ろうとするのが)

 全身の筋肉が目覚めていないという感じがする。ザックを背負ってからだが重い。槍ヶ岳のときにはこれ以上を背負っていたはずなのに、あのとき以上に負荷がかかっているような心地がする。思い出の補正だろうか。
 準備運動を兼ねるつもりで、自分のペースを確かめながら登る。樹林帯を黙々と進む。ゆっくりと呼吸を繰り返し、どこか謙虚な気持ちが湧き出てくるのを感じながら、粛々と……

 一時間ほど歩けば、もう最初の山頂に到着する。
 高取山、標高は705メートル。
 当然、森林限界などはない高さで、樹林に囲まれているが、鉄骨づくりの立派な展望台がある。ザックを置いて、階段を登ると、樹木の真上から、山の影に落ちる宮ヶ瀬湖を見下ろすことができた。山脈によって隔離されて、穏やかな眺めだ。その向こう側の稜線まで見ることができた。

 (まだ残雪がある!)
 天見は眼を見開いて、その情景を網膜に焼きつけた。
 (この時期にまだ残ってるのは、珍しいんじゃないか。今年の冬が寒かったせい? 丹沢山や、蛭ヶ岳のあたりなら、雪を踏んで歩けるかもしれない。軽アイゼンを持ってきておいて良かった)

 耳の裏に血液が流れる音を聞く。どくん、どくんと、もうひとつの心臓のように脈打っている。




 空は計画書を灯りに掲げ、天見の筆跡をじっと見つめた。殴り書きではなかった。読みやすい楷書の、簡素ながらも明白な内容で、真面目で几帳面な彼女の性格がそのまま浮き彫りになったような文字だった。コースタイムはきちんと計算され、過分も無理もなく、エスケープ・ルートに予備日もしっかり確保してあった。見事なもんだ、と空は思った。装備も省略することなく詳しく書かれている。あたしだったら“テント泊装備”とか“冬山装備”とかで一括しちゃうんだけど。

 陽子はかなり参っているようだった。「今朝になって初めて目を通したの」自分の手のひらに額を埋めるようにして座っていた。「昨日の晩に……計画書置いておく、とは聞いたんだけど。なんだかあまりよくない気分になって、やり過ごしてしまった。日帰りか、そうでなかったらあなたと一緒だと思っていた。ごめんなさい、言い訳ね」
 「陽子さんが気に病むことはないです」
 「あの子はまた不登校を起こすつもりなのね。中学に入って、少しは落ち着いたかと思ったのに。私にはあの子の考えてることがまったくわからない。手に負えない、どうしたらいいのか――」

 しかし、空にはそこまで問題視しなくてもいいように感じた。計画書を見る限り、天見は自分の実力をきちんと把握していて、丹沢がどういう山域かも、調べ尽くしているような印象があった。もとより天見は、頭の良い娘だ。分別と冷静さがある。無知に飽かせて無謀に走るとは、とても思えなかった。

 懸念はあるにはある。「丹沢は幕営禁止の山だ。天見はそのことがわかっているから、全部ビヴァークで通す気だと思います。装備にツェルトはあるけどテントはない」
 「途中で下山してくれればいいけど」
 「身の危険を感じたらそうすると思います。でも、あの子の身体能力なら充分最後まで行けるんじゃないかな。山中湖に抜ける気か。丹沢全山縦走とはね」
 「……。小学校に行かなくなってから、あの子が毎日走っていたのは知ってる。中学でバスケ部に入ったことも知ってる。でも、そうなるまえの天見はものすごく大人くて、運動の苦手な、山とはまるで無縁の場所にいる女の子でしかなかった。親戚もみんな体育会系とは真逆のひとたちばかりよ。生来、こうしたことに向いてる子じゃない」
 「そうですか?」空は微笑んだ。「そんなこともないと思いますよ。実際、天見は積雪期の槍の山頂まで登れるくらいの体力はあった。弱音も吐かずに、あたしについてくることができた。同年代の子と比べたら軽くずば抜けてるほうじゃないかな」
 「……」
 「子供は大人が考えてるよりずっと大人だ。――ありきたりな物言いですけど、真理ですね」

 空は口を閉じ、少し考えて、
 「でも、心配ってのはわかりますよ。あたしも逆方向から登って、ちょっと天見を探してみます。道中会えたら上々。仕事があるんで、泊りがけで縦走して探すってわけにはいかないですけど」
 「ありがとう、空さん」
 「いえいえ」

 陽子は深く溜息をついた。目許を手で覆い、ほとんど食卓に突っ伏すようにした。
 天見のことを心配しているのか、責任を感じているのか、状況を憂いているのか、空には判別がつかなかった。
 ややあって、「私はどうすればよかったと思う?」
 空は眉を上げた。「どうでしょう」
 「決定的な間違いを犯したとは思えない。いえ、犯したかもしれない、でもそれが何処で何をやったのかわからない。不足を感じさせてきたとは思えないけれど、あの子がなにを不満に感じているのかわからない」
 空は軽く舌を鳴らし、陽子の気を自分に向けた。「不満がなければ親の思い通りに育ちますか?」
 陽子は空を見つめて唇を歪めた。

 「例えば……」と陽子はためらいがちに言う。「あなたに天見を放るような真似をしなかったほうがよかった? それは、そう、山って選択肢を与えなかったほうが、って意味だけど」
 「どうですかね。そりゃあたし自身、まともな人間だなんて胸張って言える女じゃないですけど」
 「ごめんなさい、あなたのことを言ってるんじゃないの。可能性は多いほうがいいってわかってる」
 「でも、可能性は親が与えるものじゃない。最初よりも先にそこに転がってるものです。自由とおんなじで」
 「あの子は山にのめりこみ始めてる。他のことを犠牲にして。私は天見から山を取り上げるべき? そうして、学校や勉強に専念させるべき?」
 「山を取り上げるなんてできることじゃない。当人以外には。山はあたしらがなにをどうしたって其処にあり続けるものなんだから。で、あたしが自分から山を取り上げて、どうなったかは、看護してくれた陽子さんはよく知ってますよね?」
 空のことばには茶化す調子があったが、陽子は笑わなかった。「よく知ってる。あのときのあなたは見てられなかった」
 「例えば、ゲームやアニメに夢中になってる子供からそういうのを取り上げるなんて発想は、親であったら誰でもする。政治家なんかも。けど実際にそうして、それが子供に良き影響をもたらすかっていったら、必ずしもそうじゃない。それらが良き道を与えてくれることも十二分以上にありえるし、取り上げられた事実そのものに怒りと憎しみを覚えるってことを忘れちまってる。悪感情をゲームのせいにするのはいかにも容易ですけど」

 陽子は完全に行き詰っているようだった。空はなおも言った。
 「少なくとも、天見は牙を持ってますよ。見事な教育で牙を抜かれちまった純粋培養の子供と違って。で、その矛先を行儀よく納めておくこともできるし、自分や誰かを守るために剥き出しにすることもできる。あたしはそういうの、悪いことじゃないと思いますけどね」




 杏奈は携帯を手に蹲った。「うん、そう――ちょっと緊急事態が発生して! ほんとごめん、はい、うん……今日はちと無理です……え? うう、ありがとう、そう言ってくれるかー」

 約束をドタキャンしても穏やかに許してくれるシズに対して、だからこそ、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。これで癇癪でも起こしてなじってくれれば気が楽になるものを、聞き分けよくきちんと事情を尋ねてくれるから気兼ねなく天見を優先できない。実際、杏奈にはなんの落ち度もない――前日に空の部屋で酒までかっくらって寝落ちしたことは別として――のだが、そういう態度で接されると、どうしても自分が悪い気がしてならないのが、彼女の弱いところだった。ましてまだシズをどう扱っていいのかまったく明白ではない。友人というには微妙な距離。

 「うん、埋め合わせは絶対にするから! ほんっっとーにごめん! うん……また連絡する。はい。ありがとう」

 杏奈は通話を切った。溜息をついて頭をがりがり。気を取られることが多すぎて飽和している心持ちがする。なにが厄介かといえば自分のことにまったく集中できないのが辛い。けれど、ひとりだったらひとりだったでまた別のことに気を取られる。
 空が玄関から出てきて、杏奈は立ち上がった。真っ蒼に突き抜けるような快晴の下で表情が心なしか倦んでいる。しかし、思っていたよりも呑気そうではあった。

 「どうでした?」
 空は肩を落とす。「天見より、母親のほうが心配だな。考えすぎてバターになってるね。こういうことってだいたい、当人よりも周りの人間のほうが気を病むもんだ」
 「はは」杏奈は乾いた声で笑った。「確かにそっすね」

 空は計画書を杏奈に差し出した。「丹沢全山縦走だ。仏果山方面から入山して、大山や塔ノ岳を越えて、西丹沢から、山中湖に抜ける。だいぶ寄り道していくみたい。ピークハントっていうより、そう……ひとりで山を歩くこと、それ自体を目的にしてる。文字通り山篭りってわけだ」
 「なんのために?」
 「さあね。あたしの貧弱な脳味噌じゃ、登ってみたかったから、くらいしか想像できない。あんたはどう思う?」
 「……。それ以外になにかあります?」
 「現実逃避とか」
 「だったら、もっと楽しいことするんじゃないですかね。女の子らしく」
 「あたしはこれ以上に楽しいこと知らんけど」
 杏奈は唇をへの字に曲げた。「あたしもです。ちくしょー」

 「学校サボって山に行くって、あたしもよくやったよ。そんなに問題になんなかった記憶があるけどね。時代のせいかもしれない、なんといっても十年以上まえのことだし。母親ってあんな風に心配するもんだって、初めて知ったよ」
 「いやいやいや」杏奈は首を振った。「そう気兼ねなくやるもんじゃないですって。後でなに言われるかわかったもんじゃないんですから」
 「杏奈もやんなかった?」
 「いや……二、三回くらいは。でも山んなかで吹雪かれて、止むを得ずって感じでしたしー……」
 「不登校ってわけじゃなかった。けど、天見の場合はこれも不登校扱いされるんだろうね。前科持ちの不自由ってやつで」

 いっとき、空は天見のことを考えて物思いに沈んだ。なんだかしばらく会っていない気がする。愛想を振り撒くことのない、どこか睨むような眼をした、自分の半分の時間も生きていない小さな少女。反逆が身に染みついているのかもしれない。一緒に山を登って、彼女について感じたのは、そうした印象だった。天見くらいの年頃のとき、あたしはどうだったか。
 天見はなんだか、敢えてそうしているように、空には思われた。必要性に駆られて――というよりは、反抗の過程そのものを必要としているような。餓えて、喰らおうとしている。彼女が世界に求めていることと、世界が彼女に求めていることの、百八十度の違いが、そのまま生き方になってしまっている……

 「いや、天見がいないところでそういうことを考えるのも、ばかばかしいことだね」
 「はい?」
 「とにかく一度会ってみようってこと。いまから行って、追いつけるかな。反対側から探してみるか」
 「行ってみます?」
 「そうしよ。杏奈は今日大丈夫?」
 杏奈は肩を落とした。「心配すぎて、他のことなんかやってられませんよ」




 「あたしのお姉ちゃんときどき凶暴な猫って感じだったけど、姫ちゃんときどき凶暴な犬って感じなんだよなー」
 「は?」
 向き合った瞬間にそんなことを言うものだから、氷月はそのフェイクに反応し損ねた。紡の手元でボールがあらぬほうへ動きかけ、咄嗟に手を出したときにはもう失敗を悟っていた。
 「……っ」

 肩と肩とが密着し、単純なパワー差のうえにスピードがある。そうなると、ディフェンスのしようがない。しなやかな腕がボールを真上に伸ばし、手首が鞭のようにしなり、氷月にはまるで届かない場所でシュートが放たれた。
 紡には確定した勝ち筋のひとつだったのだろう。ボールはなんの障りもなくゴールリングに吸い込まれる。この女はでかいうえに巧くて手に負えない、と氷月は腰に手を当てて溜息。紡は軽くステップを踏んで体勢を立て直し、ぺろりと舌を出して笑ってみせた。

 「なんの話?」
 「部長はネコっぽいですよね! 肝心なとこで手出せなくてヘタレてそう!」
 「喧嘩売ってんのかこら」
 「姫ちゃん見てると遠い田舎のお姉ちゃん思い出して和むんですよお」

 パスを受け取り、氷月がオフェンスに回る。ゴール下の紡は体格も相まってなかなかの威圧感がある。外でシュートしたくなる衝動をぐっと抑え、重心を押し下げて小さく侵入する。氷月は大抵のことはできるが器用貧乏でこれといった攻め手がない。

 小刻みにフェイクを混ぜつつ、「姫川がお姉さんに似てるって?」
 「うんにゃ、ちっとも似てません。でもそっくりなんですよー、最後の最後の土壇場で」
 「なんじゃそりゃ……つまり、どういうこと?」
 「爪、かな。壁にがしがし爪立てて登ってくようなところ。羽根で軽やかにひとっ飛びするんじゃなくて、泥臭く一歩ずつひたすら足掻いてるような感じの」

 突っ込むとみせかけて反対方向に跳び、フェイダウェイ。打った瞬間に入ると確信できる軌道だった。しかし、紡の跳躍力がおかしい。ブロックされないように打ったはずがやすやすと弾かれる。ほとんど飛翔の領域に踏み込んでさえいる。人間が空なんか飛べるはずがないのに。

 「姫川とはいつから?」
 「五年の冬からっす。あたし四年のときこっちに転校してきたんでー、それよりまえの姫ちゃん知らんですけど。昔はもっと愛想よかったらしいですよー? フツーに可愛い女の子で、男子からモテモテだったとか」
 「ほんと? 愛想いい姫川とか想像もつかん……」
 「アハハ! まったくっすねー!」

 だいたいちらっと笑ったところすら見ていない。一年生にとっては三年生が怖ろしく見えたりするものだが、そういう気配すらちらつかせない。犬? だったらもっと、尻尾振るうくらいの可愛げがあってもいいと思うのだが。

 「まあ怪我せず帰ってきてくれりゃそれでいいけど」
 紡はくすくすと笑う。「大怪我するのもいい経験っすよー?」
 氷月は肩を落とす。「試合出てくれなきゃ困るんだよ……」
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2013/08/11 12:08 | Comments(3) | SS

コメント

pixivで一番多いタグはオリジナルだからきっと大丈夫です!
pixivの小説は夜麻産さんのくらいしか滅多に読みませんががが。

陽子さんを見ているとああこれは母親だなと感じる。
怪我とかすると本人より親のほうが心配するのですよね。
もちろん愛情ゆえですが、自分がいくら大丈夫といっても聞いてくれなくてもどかしく感じることが多々あります。
posted by 無題 at 2013/08/11 21:59 [ コメントを修正する ]
あああ、複窓してて間違えた、お恥ずかしい……

pixivは検索しづらいのが難点ですね。
元々イラストサイトだし仕方ないところはあるけれど、小説検索時の一覧表示くらい実装してくれてもいいような。
posted by 446 at 2013/08/13 14:39 [ コメントを修正する ]
>>無題様
この歳になっても親の気持ちはいまだわかりませぬ。わかりやすく心配してきたり、心までずたずたになってるときにばっさり突き放してきたり、なんかもう全部ポーズじゃねーかと(ry
わからないものを書いてると楽しいです。これが物書きの醍醐味かなあ。

>>446様
夜伽やそそわのシステムの秀逸さときたら。広告もないからシンプルですし、見やすいし、コメ数も一目瞭然(それで心折れるときもry
posted by 夜麻産 at 2013/08/18 11:32 [ コメントを修正する ]

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