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2025/02/08 00:45 |
(東方)
 
 闇黒片 ~Chaos lives in everything~
 
 
 
 Stage4 地底教会
 
 
 
 ――ラヴリーラヴリーベイビーズ
 

 3/4
 

拍手



 「鬼は生来の独り身でな。酒を飲むとき以外は、仲間とつるんでることなんてなかったもんだ。四天王とひとくくりにされても、四人揃ってなにかする……なんてことはありえないようにな。けど妹は、いつも誰かしらと繋がりを求めてたよ。鬼らしくない鬼だったんだろう」
 翠に濁った、人魂漂う池の睡蓮の葉を眺めながら、牛頭は言った。
 「寂しがり屋……だった。ちっちゃなときは、ずっとおれの後ろをついて回ってきたもんだ。星熊の大将にゃよくからかわれてたな。そうしてると、もうほとんど人間の女の子と変わり映えしないくらいで、能力が能力だから、腕っ節も弱々しかった。鬱陶しくなって、遠ざけたりもしたが、でも、可愛かったよ。なんて声かけたらいいのかわからなくて、困ったときもあったが」
 
 橙は牛頭の横に立ち、ぼんやりと同じ方角を向いていた。地霊殿へと続く、氷雪の道は、春を過ぎても冬が残っていた。旧地獄跡はあれだけ熱いのに、その分だけ、このあたりは冷えるのだろうか。気候次第では夏にさえ雪が降るときもあるのだと、燐に聞いたことがあった。
 
 「地獄は辛いぜ。おれみたいな、粗暴そのものみたいな男にもな。もっと気遣ってやれば良かった、って思うのは簡単だが、実際、どうすりゃ良かったんだろうな。最初っから地獄じゃなく、こっちにくりゃよかったのかもしれねえ。でも、どこでもおんなじだったかもしれねえ」
 「うん」
 「後悔ばっかだな。おれはあいつに会うのがまだ怖いんだろう」
 
 夕暮れが射し込むこともないから、時間の感覚がぼやけていた。地底特有の、黒い薄暗さ……
 橙は眼を細めた。
 不思議な感覚が胸を満たしていた。牛頭の後悔にいざなわれ、ある種の感情が引き起こされているようだ。後悔ではない、後悔するかもしれないという怖れ。絣は弟子であり、娘のようなものでもある。どのように成長するかは、ときの流れ以外には証明できない。
 巫女への批判を一身に浴び、黒ずんだ一部を育みつつあるのは知っていた。そのままでいれば、それに引き摺られて堕ちていくのもわかっていた。が、橙はその先が見たいのだ。霊夢の影は絣だけでなく、これからずっと、代々の巫女が背負っていく欠片でもある。
 それに引き摺られるのではなく、それを己の物とすることができるかどうかは……
 
 牛頭は立ち上がった。
 「すまねえ、嬢ちゃん。あんたがいるってのに、弱気になっちまうな」
 「気持ちはわかるよ」
 「そうかい? ありがとな。今日はもう切り上げようぜ」
 
 
 
 「あの、花乃さん」
 「なんだ」
 「指の紋様……お風呂はいったら消えちゃったんで、やりかた教えていただけませんか。旧都に行くたび塗ってもらうのも悪いんで」
 
 花乃の家。馬頭は『女性が入る湯船にも、入った湯船にも入れない』と言って旧都の銭湯へ行ってしまい、絣と花乃のふたりだけになっている。絣は持ってきた自分の寝間着に身を包み、花乃は帯を締めずにまえを大きく開け放っていた。
 窓は開け放たれ、地底の夜の、生温い風が静かに流れ込んでいる。花乃は障子の隙間から外を眺めていたが、絣に振り返る。どこでつけたのか額の傷が生々しく変色している。
 
 「巫女が覚えるべき技じゃない。別にいいだろう、こんなのは。それに聞いてるぞ、今代の『零無』のことは……余計な技術を身につけてる場合じゃないだろ」
 「だから覚えておきたいんです」絣は静かに言う。「私は巫女の武器が使えません。針も札も、陰陽玉も。自分のものにできなくても、そういう術があるってことだけでも知っておきたい」
 「面倒だな……」
 「そこをなんとか」
 
 花乃は少し考える様子で、顎に指を添える。
 
 「……あの猫女によろしく頼むと言われてしまった。星熊様にもだ」
 「じゃあ」
 「いいんだがな。しかし皮肉なもんだ。巫女の武器が使えない、か」
 
 花乃は窓から離れ、棚に近づき、ごそごそとなにかを漁る。
 そのとき、扉がノックされ、絣はそちらを向く。
 
 「ただいま。いやぁ、ひどい目に遭った。風呂上りの鬼に捕まって居酒屋に引っ張り込まれるところだった。間一髪抜け出さなければ、いまごろ旧都で朝を――っ!?」
 馬頭が扉を開けた瞬間、花乃の手元が閃き、なにか細いものが飛ぶ。馬頭の頬をかすめ、扉枠に突き刺さる。絣は驚いて目を見張る。
 「着替え中だ、開けるなばか」
 「すまないッ」
 馬頭は引っ込む。
 
 「――え? パスウェイジョンニードル……!?」
 「武器なんかそれぞれの自由だ。だが、なにに適正があるか自分で選べん」花乃は帯を締めると、ふたつの小皿と筆を出し、炉端に座る。「霊夢と初めて会ったときは十秒でやられたがな、その後も何度かやりあった。ようやくついていけるようになったとき、自分のなかで育っていた奇妙な感覚に気づいた。霊夢の動きに、不思議となにか……しっくりくるものがあった。欠けたパズルの一片……」
 絣はおずおずと花乃の横に正座する。
 「もちろん、毒仕込みの針だ」花乃は淡々と言う。「それまではそこにいるだけで周りに毒を撒き散らすだけだったのが、針を使うようになって変わった。より効果的に対象へ向けられるようになるどころか、発動寸前まで己のなかに抑え込んでおけるようになった。危ういと思ったら自分にぶっ刺してな……。得るまでは思ってもみなかったことだ」
 
 馬頭が許しを得て入ってくる。扉枠に刺さった針をしげしげと見つめる。古い思い出が湧き出て顔をしかめる。「……いや、僕はこれでハリネズミにされたものだ。札の流れ弾まで飛んできて」
 
 「それが巫女の正しいあり方だ」馬頭に言い、絣を見て――「針も札もなしか。あの紋様は皮膚に直接塗るものだから、他に応用はできんぞ。それでもいいなら教えてやる」
 絣は頷く。「お願いします」
 「一晩めいっぱいかかるぞ。今日は徹夜だ。それでできなけりゃ、明日の晩もやるだけだ。それでもだめなら……明後日も、明々後日もやってやる」そこでにやりと笑って、「なんといっても、巫女をしごくなんて貴重な経験だからな。先代への恨みを徹底的に晴らしてやる。覚悟しておけよ」
 
 
 
 ……花乃は怖ろしくなってくるほど活き活きとしていた。
 絣は完全な寝不足になり、翌朝旧都にきたはいいものの、完全に気力が粉砕されていた。眼の下に隈をこしらえ、注ぎ込まれたことばの毒に足取りはふらふら。もちろん、一晩で会得できるほど才能に溢れているわけでもない。
 額に巻いた包帯の下から、花乃の施した指先の紋様を見つめ、教えを反芻していると、気がつくと無意識に例の教会へやってきていた。
 
 「ね、眠い……」
 
 礼拝客はいない。絣はよろめきながらも長椅子に腰かけ、そのままこてんと横になる。白い天井を見つめていると、結局、そのまま眠ってしまった。
 目覚めると、にこにこしながら見下ろしてくる白くうつくしい顔。一瞬、ここがどこでそれが誰だかわからない。が、すぐに覚醒する。
 
 「ぅわぁっ!?」
 
 咄嗟に跳ね起きる。シスターの膝枕でぐっすりやっていたらしい。寝不足は完全に解消していたが、代わりに社会的に大切なものを失ったように思え、動揺してしまう。
 
 「おはようございます」とシスター。
 「おっ、おはっおはようございますっいま何時ですかっ!?」
 「お昼ですよ。もう少し休んでらしても大丈夫ですのに」
 「ごめんなさい!」
 
 ひどくナチュラルにここで眠ってしまったのは、その閑散とした信仰の場が、神社とかぶってしまったからだ。無意識に、自宅と同じ精神状態に入ってしまっていた。他人の家なのにそれはとても失礼なことだと、絣はしゃがみこんでグーに握った手で頭を抱える。
 伝家の宝刀、しゃがみガードの態勢に入ってしまった絣に、シスターは中段で応戦。鬼の大きな手のひらで絣の頭をなでなで。
 
 シスターはちょこんと首を傾げて言う。「もしかして……巫女さんですか?」
 「え、あ」
 「柔らかい霊力……。先代さんとは別物のようですけれど」
 「は、はい、不肖の身なれど僭越ながら、一応。絣と申しますっ、以後お見知りおきをっ」
 「そうでしたか」
 
 すっかり動揺してしまった絣にくすくすと微笑み、手を取って立ち上がらせる。その目線が紅と黒の禍々しい紋様に落ちる。
 
 「花乃さんの術式ですね」
 「え、知ってるんですか?」
 「たくさんお世話になってるんです」シスターの笑みが穏やかに深まる。「花乃さんのところで寝泊りしているのですか? どうりで、旧都の宿に巫女さんがいるという話も聞きませんし。不思議な方ですよ、口から出るのは毒なのに、触れているとやさしい」
 「えっ」
 
 そうなのか。絣は不思議なことを聞いたように唖然とする。
 花乃のことはまだまったくわからない。でも、やはりそういうものなのかもしれない。目に見えるものほどあてにならないのは、獣の件で思い知っている。ミケだって、本性はあんなおっきな虎型の化け猫だし、サクラは妖精メイドでも頼りがいのあるサムライだった。
 むーっと物思いに陥り、わからないものを思考に収めてぐずぐず。見るだけでは足りない、視続ける……。もう一度無意識を意識し、スローガンに刻み込む。うかうかしてると、また見なくてはならないものを見逃してしまうかもしれないのだ。
 
 このシスターは……? ふと思い、その儚げな顔をじっと見つめる。そうした視線をまえにして、シスターは微笑を崩さず首を傾げたまま。そうした仕草が、膂力の塊である鬼であるのにひどく可憐に見え、絣は恥ずかしくなって慌てて顔を伏せる。
 「す、すみません」
 「なにか?」
 「いえっ」ぶんぶん首を振って――「……最近、その、なんていうか。見た目と中身が違うひととばかり知り合って。ここのところずっと頭がぐるぐるしてるんです、それで……」はっと我に還ってまた頭をぶんぶん。「いやっ、なに話してるんでしょう私っシスターさんの知ったことじゃないですよね! 寝不足に寝起きでまた頭がぐるぐるっ」
 
 傍から見るとおかしなひとり相撲を取る絣に、シスターは柔らかい表情を浮かべ続ける。軽く取ったままの小さな手は大きな手のひらの上で小刻みに動く。
 
 「告解でしたら、よろしければお話しませんか?」
 「え?」
 「ああ、そんな大それたことでなくてもいいのです。ただ切羽詰った悩み事ほど、関係ない赤の他人のほうが話しやすいことってありません?」
 「でも……」
 「旅人ですよ。あなたにとって私も、私にとってあなたも。もちろん、包み隠さずすべてを申せとも言いませんし。溜まり溜まった毒を吐くだけでも、楽になりますよ」
 「……どうしてそんな親身に」
 シスターはくすりと頬を綻ばせる。「それが仕事ですから」
 
 悩める子羊になんとやら。絣は恥じ入ったように俯く。似たような仕事に従事する者だが、絣は自分がそこまでできる気がしない。慌てて、いつも切羽詰ったようになる、未熟者だ。自分の苦悩で精一杯、他人の重荷まで背負える気がしない。
 
 「まああまり深く考えないでください。強制してるわけではありませんので。そうですね、でも、よろしければ地上のことをお話してくれませんか?」
 「え」
 「実は私、例の異変で封印が解かれてからも、まだ地上に出たことがないのです」
 
 今度は絣が首を傾げる番だった。
 
 「どうしてですか?」
 「怖くて……」
 「そんな怖いところじゃありませんよ! 確かにとんでもない妖怪さんはたくさんいますけど」ルーミアの天使のような悪魔の笑顔が浮かんできて、ぶるりと身震いをひとつ。「っいや、だいたいおおむね平和ですっ。いまの博麗の巫女はあれですけど、そんなに支障もないです!」
 
 それは巫女としてどうなんだと内心自分に突っ込みを入れる。
 シスターは首を振る。
 
 「怖いのは自分です」
 「――」
 膝の上に重ねて置かれた手がわずかに震える。「……地底の妖怪、ですから」
 
 
 
 シスターの隣に座り、誰もこない静かな教会で、絣はぽつぽつと地上のことを話し始める。次第に調子が出てくると、楽しげなことばは次々と出てくる。
 生まれ育った人里のこと。中心部からやや離れ、山に程近く、妹と頻繁に野を駆け抜けるように飛んだこと。そうしたときに出会った、人里でも山でもない地図上の空白地帯に住む訳ありの人妖。収穫の時期、豊穣の神に祈りを捧げてなぜか弾幕になってしまったこと。少し遠い寺子屋に通ったこと。半人半妖の良き先生。霊夢に見出された妹と、世話役としてついていった自分――
 
 シスターは聞き上手だった。穏やかな微笑を浮かべ、真摯な目線を真っ直ぐに向けてきた。緩く相槌を打ち、時折質問して話題を引き出す。
 けれど絣にはその微笑が、いまにも崩れていきそうな、なにかを諦めたもののように見えてならなかった。闇の奥底から光を見上げている者のように感じた。そう感じるのは、霊夢に修行をつけられていた頃の妹を見る自分の顔を、シスターの眼に見つけたように思ったからだった。ひっそりと身を潜め、隠れて極力自分を消し、影そのもののように生きていた……
 そのせいだろうか。恐らくは自分の何十倍も生きてきただろう彼女を、なにか不意に、自分より年下のように感じた。ほんの子供を相手にしたような感覚を憶えた。まだ生まれてほんの数年しか経っていないかのような印象まで受けた。
 
 どうして? 絣は困惑して自分に問いかけた。すると、シスターは首を傾げて絣を見つめた。その瞬間に、その妙な印象は消えてなくなった。
 「あ、いえ……」
 「もしよろしければ」シスターは軽く胸に手を当てて言った。「まだ地底におられるのでしたら、またいらしてください。迷惑でなければ、またお話を聞かせていただきたいです」
 「もちろんですっ、迷惑なんてとんでもないです!」
 絣は嬉しくなって言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そのようにして数日、過ぎた。
 進展はあったかもしれないし、なかったかもしれない。
 
 
 
 「埒が開かないね」
 「橙さん、すまねえ。もう――」
 「今日は一度休んで、明日からやり直そう。あんたも相当疲れてる」
 「……すまねえ。ありがとう」
 
 橙は牛頭と別れ、旧都の外側、暗く沈んだ荒野を気の向くままに歩いた。
 (さぁて、どうするかな)
 紫や藍ならどうするだろう、と思うのだ。その無尽蔵の能力を使ってむりやり引き会わせる? 問答無用でどうにかしてしまう?……そんなことはしないだろう、となんとなく思う。霊夢や魔理沙、人間たちが解決したあらゆる異変に、力ずくで干渉しなかったように。それは抜本的な解決ではないのだ。そんな容易いことではない。
 
 (異変を解決するのは、巫女の役目。……それは、そんな単純なことば以上に深い意味があるんだ)
 
 ふと、絣はどうしているのか気になった。花乃の家のほうへ、ふらふらと歩いてみた。
 偶然は必然なのか。いきなり絣を見つけた。荒野の、土くれが丘のように盛り上がった、鬼火の深い影になっている場所。絣はじっと橙のほうに背を向けて立ち尽くし、軽く頭を傾け、両手を脱力して垂らしていた。
 すぐにわかった。修行の途中だ。
 橙はくすりと微笑んだ。
 
 (息抜きと思ってたけど、意味がないね。あれくらいの子供は、親がなにもしなくても勝手に成長するものだ)
 
 
 
 絣は眼を閉じて闇を見つめていた。
 ちりちりする左手の指先、花乃の術式を感じながら一から反芻し、そこからなにができるのか、己に問いかけていた。精神集中、瞑想……呼吸を針のように細くして動かないことをからだに強要した。霊力を編んで、丹田に気を溜める。それだけでも恐ろしいほど体力を使う。
 
 獣のことばかりが頭に浮かんでくるのだ。永劫の問いかけをもたらしたあの佇まいが。彼女の過去にいったいなにがあったのだろうと思う。私の知るべきことではないのかもしれない。立ち入るべき世界ではないのかもしれない。けど、でも……
 私の弾幕を重ねた。黒符の辿り着く先を示した。
 また逢えるかどうかわからない。あれが今生の別れだったかのかもしれない。
 そう考えると胸が張り裂けそうに痛む。喰われた歴史が穿った、黒々とした心の穴が。
 
 両手で顔を覆い、溜め込んだ息を思いっきり吐き出す。
 剥き出しの爪がかたちづくる弾幕の軌跡が闇黒を引き裂く……
 
 「……」
 
 己の爪を見る……
 
 
 
 「ひとつだけヒントをやる。貴様の料理にはなにもかもが足りないが、いちばん足りてないものははっきりしている。愛情だ」
 「よしてくれ。愛情の篭もった料理が美味くなるなんて、現実的に考えてありえないことだ。僕はそんなことは信じない。レシピ通りにやってるのに、どうしてこんなに味気ない結果になってしまうんだ……」
 「貴様の脳味噌はほんとうに穴ぼこだらけの豆腐みたいなもんだ。大豆の絞り汁をぶちこんで発酵するまで待ってたほうがよほど役に立つ。わかりやすいものだけを見てわかりにくいものを切り捨てる、目先の利益ばかり追いかけて大切なものを後回しにする、そんな腐り切った態度はほんとうに役人仕事そのものだ。政治屋に頭まで汚染されたか、飼い犬め。ケツを蹴っ飛ばしてやるから犬らしくわんわんと鳴いて明日の朝まで反省していろ。それでもわからなければ――」
 「頼む、花乃さん! 頼むからなにが悪いのか教えてくれ! そう真横で延々と毒を垂れ流しにされていると悪いものに目覚めてしまいそうだ、それはまったく社会的に困る!」
 「最初からそうやって頭を下げろというんだ、変なプライドにばかり囚われて、貴様というやつは。よおし教えてやろう、貴様の料理には愛情ある者が必ず行うひとつの過程が完全に欠落している。絣の話を聞いたか? やつは調理のときまず師と妹の顔を思い浮かべるという……なかなか大したもんだ。貴様にそこまで期待しちゃいないがな、誰かに食べてもらうということを意識したとき、おのずと答えが見えてくるはずだ……」
 「わからないッお願いだはやく教えてくれッ、頭がどうにかなってしまいそうだ!」
 「味見だ」
 「ちくしょう!」
 
 その日の晩御飯は多少はマシになった。牛肉にごぼうと茄子を加えて卵でとじた鍋に、かぶに一手間かけてしょうゆベースの漬け汁に三十分ほど漬けたもの、揚げ出し豆腐に大根おろし。料理本から丸写ししたようなものだけだが、それでもきちんと食べられる味にはなっていた。
 
 絣は卵とよくからまった牛肉を食べながら、ぽつんと呟く。「……おみおつけくらい私につくらせてくれても……」
 「だめだ」花乃はばっさりと言う。「逃げ道をつくると貴様に頼りきりになってしまう。それはこいつのためにならんぞ、不味くても私たちが多少我慢すればいい話なんだからな」
 「くっ……申し訳ないやら悔しいやら不甲斐ないやらっ……」
 「神社だとずっと私がつくってたのに……他のひとのごはんを食べるなんて、久し振りです。なんだか怠け者になりそう」
 「貴様の根っこが働き者ならなにをどうしたってそうはならん。そんなことよりさっさと指の術を覚えろ、完全に昼夜が逆転するまえにな」
 絣は馬頭と同じようにすっかり萎縮してしまう。花乃にまったく頭が上がらない、完全な上下関係が成立してしまっていた。
 
 食事が終わると、花乃は風呂に入りにいく。絣と馬頭はふーっと息をつき、足を崩してやっとくつろぐ態勢だ。絣が炉端の火を見ていると、馬頭は考え考えといった風に声をかける。
 
 「少しいいだろうか、絣君」
 「はい?」
 「花乃さんのことなんだが、どう思う?」
 「どうって」
 「彼女の『毒』についてひとつ気づいたことがあるんだ」
 
 馬頭はそっと身を乗り出し、囲炉裏の上で声を潜める。自然、絣も身を乗り出して額を突き合わせるようなかたちになる。
 
 「君もそうだろうが、僕もここにきてから散々彼女の毒をくらっている。それはもうすっかり滅入ってしまうほどで、こうしていても――」肩を落とす。「――思い返してがっくりきてしまうくらいに」
 「ぅ、私も……」
 「うん。だがよくよく思い返して、考えてみると、僕は君のいないところで君の毒を耳にしたことがない」
 「え?」
 「すべて直接攻撃だ。だからね、例えば料理をしてるときに、君を引き合いに出して見習えと言うことはあるが、君の欠点を指摘するようなことはないんだ。君の師についてもそうだったろう? 見事な交渉術に引っ掛かった云々とか」
 「あ」
 
 絣は頷く。そもそも橙についてひどい悪口を言われれば、絣はむしろ怒りを覚えて反抗するだろう。そういう感覚はなかった、自分について確かにそうだと思うようなことばかりで、反抗のスキマさえなかったのだ。
 
 「そういえば私も、馬頭さんのいないところで馬頭さんの毒は聞いてません」
 「だろ?」馬頭は目を輝かせる。「まあ牛頭の手紙についてはあれだったが、実際に朗読はされなかったし。だからね、つまり花乃さんは口は悪いが、陰口を叩くってことがないようなんだ。むしろここにいない者に対しては遠慮なく褒め称えてるような節さえある」
 「つ、つまり――」
 「まあ毒には違いないんだが、でもそう考えると、彼女の本心が垣間見えてくるような気がしないかい?」
 
 絣はごくりと唾を飲む。シスターのことばが思い浮かぶ、触れていると優しい。
 厳しいのは裏返しだ。絣にはそれがわかる。橙だって、修行のときは容赦がない。切り裂かれた額はいまもずきずき痛んで、包帯を巻きっぱなしになっている。でも、それはほんとうに思いやってくれているからだ。どうでもいい相手にはそこまでしない、傷つけられた側は眠れるが傷つけた側は眠れない。眠れないのをわかっていて傷つけにいく。それがわかるから、橙に傷つけられるのはあったかいのだ。
 
 「――ツンデレ……っ!」
 「いやそういう風にくくるのもどうかと思うけれど。だからそう、つまりだね、僕にはなんだか可愛く思えてきたというわけだ。がっくりくるが、心底厭な気分のしない毒なら、いくらでも耐えられそうな気がする。だって実際にそうなんだものな」馬頭はにやりと笑う。「むしろどんどんこいって気分だ。貧乏くじとおんなじさ」
 
 ふたりは眼を合わせる。思いがけず判明した事実に、眼から鱗が落ちたようだ。同じ脅威に対抗する者同士、戦友の手をがっしと握り、決意を新たに戦線に向かう。
 そうとわかれば毒だって怖くない! 抗体を自力で産んだふたりは不敵な面構えで花乃を待つ。待ち遠しくなると腹から笑みが零れ出てくる、この世に下克上ほど愉しいことがあるだろうか。花乃がどんな表情をするか思い浮かべながら、ふたりは地底にやってきてこれ以上なく充実した時間を過ごしたのだった。
 
 
 
 花乃はすぐに上がってきた。
 「出たぞ。絣、湯が温かいうちに――うん?」
 
 居候ふたりが浮かべている、生温かい笑みに気づいた。さっきまで毒を喰らってしゅんとしていたのに、なにを話したのだか、すっかり立ち直った様子でこちらを見ている。それどころか心にゆとりを持ったようにリラックスしたようなのだ。
 
 「なんだ貴様ら……そろって気味の悪い顔をして。へんなやつらだな。絣、貴様はさっさと風呂に入って、そうしたらもうクソして寝ろ。今日は徹夜する気はないぞ、明日は一日薬をつくらなきゃならないからな。馬頭もだ。明日の朝飯の仕込みは終わったのか? まったく貴様ときたら米もまともに炊けんときたものだからな、よくもまあいまのいままで生きてこられたものだと――」
 「いやなに。僕たちはいまようやくひとつの真理に達したところさ」
 「はあ?」
 
 神妙にほざく馬頭に呆れ顔を向け、絣を見ると、これまたこくこくと頷いている。風呂に入るまえと打って変わって、なにか雰囲気が奇妙なのだ。
 まあそんなことは心底どうでもよかったので徳利と杯を持ってきて炉端に座る。なにはともあれ晩酌だけは欠かせない。鬼と長年連れ添ってきたおかげで花乃自身も相当のんべえになっている。徳利を傾けると、なぜか邪魔者ふたりも擦り寄ってくる。
 
 「なんだ貴様ら」
 「いや、ひとり酒は味気ないだろうと思ってね。付き合わせてくれないか」
 「相手を見て言え、その眼は節穴かなにかか。毒を飲みたいならいくらでも飲ませてやるがな。まあ面白い冗談だと受け取っておこう」
 「冗談じゃないですよ」絣はにこにこして、「私たちやっと毒にも慣れてきたところです。もう花乃さんと一晩中飲み比べたって平気ですよ」
 
 花乃は数秒唖然として、やっとことばの意味に追いつくとふたりをじろり。突き出された杯を無視して徳利から直にラッパ飲みする。
 
 「なにを勘違いしてるのかわからんが」そこでふうっと一息溜めて、あとは一気。「貴様らはまるで話にならん大バカどもだ。つまるところここ何日か一緒にいて、すっかり私のことをわかった気になってしまったというわけだな。なんだ大したことないじゃないか、慣れてしまえばどうってことない――って風に。そういうのがたわけだというんだ。自分の知ってることが世界のすべてだと思い込んでる勘違い野郎。頭にでっかい大穴開いた貴様らにはそれ以外の宇宙があるなんて想像もつかない。せいぜい勝手に幸せになってろ世間知らずが」
 「それで終わりかい?」
 「なんだと?」
 「ここ数日一緒にいて、僕らの忍耐力もどうやらうなぎのぼりのようだ。たしかに最初こそきつかったが、あなたのそんな乱暴なことばが心地良い背景音楽くらいにしか思えなくなってる僕たちもいる。それがなければ物足りないくらいにはなってるのさ」
 
 馬頭は絣とアイコンタクトを取り、絣がこくんと頷くと、にやりと笑みを浮かべる。
 
 「あえて致死量ギリギリの毒を飲用し続けて抗体を生み出す技術があるらしいが、まさにそれだね。いやいや、実に勉強になるよ。むしろいまとなっちゃもっとこい、いくらでも受けて立とうって気分になったものだからね!」
 花乃の手から徳利を取り上げ、自分の杯にとぽとぽ、ぐいっ。
 「……」
 「どうしたんだい? 黙ってしまったね、さすがにネタ切れかな。いや、別に責め立てたいわけじゃないんだよ、ただ僕らはやっと気づいたわけさ。あなたの言う『わかりにくいもの』について。あなたはそう口を開けば毒を撒き散らすけど、そうやって取れる印象よりもずっと優しいものだって。そうさ、なんといってもずっと彼女の世話をしてくれていたような女性だ、考えてみれば――」
 
 花乃は不意に立ち上がる。
 徳利がかたんと倒れて中身が零れる。見下ろされた馬頭はなんのとばかりに立ち上がり、そうすると背の高い馬頭のほうが見下ろすかたちになる。花乃の頭はわずかに傾けられ、双眸は前髪に隠れて見えない。
 
 (……あれ?)
 
 絣はなにか皮膚に訴えかけるものを感じて首を傾げる。
 と、花乃がゆらりと陽炎のように動いた。まるで眩暈を起こして倒れかけるような様子に、馬頭は反射的に腕を差し出して彼女のからだを支える。抱き寄せあうような姿勢で、花乃の口許が馬頭の耳に近づけられ――
 
 
 
 「……――」
 
 
 
 何事か囁かれた――
 そう見えた瞬間、馬頭のからだが固まった。時間そのものが停止したような間があった。直後、膝ががくがくと震え出す。腰に震えが伝染する。すぐに全身がかたかたと動き、眼球がぐるりんと一回転したかと思うと白目を向いて仰向けにぶっ倒れた。
 
 「えっ」
 
 絣が唖然とするなか、花乃は水面から復帰したダイバーのように顎を上げ、唇を歪めて微笑んでいた。
 空気がみしりとひび割れた。
 
 「……――んふっ……♪」
 「えっ?」
 「おばぁかさん……ほんとおにおばかさぁん……♪」
 「えっ!?」
 
 くすくすと笑みを零しながらからだをくねらせ、自分の身を抱き締めるように腕を回す花乃である。口から漏れ出るのはほとんど善がり声のような吐息混じりの囁き声。絣はひどい寒気を感じ座った姿勢のままずざざざと後退、豹変してしまった花乃を愕然と見やる。
 
 「精一杯てかげんしててあげたのにぃ……そんなに挑発されちゃったら、がまんできないじゃない……♪」
 「花乃さんっ!?」
 「ねえっ、絣ちゃん♪」猫撫で声が凄まじい。「知ってるかしら……私たちみたいな能力持ちの妖怪にとっての最高の至福ってねえ……能力のまんまに、ありのままにいつづけることなわけでねえ……♪」
 「花乃さーんっ!?」
 「最高の毒を落とさないように必死でがまんしてたのにぃ……葉を隠すには花のなか……♪ ぁアん、でもとっても幸せ、うれしいわ、うれしいわ……何百年振りかしら、思う存分の一葉をぶちまけたのは……♪」
 
 誰だてめえ。困惑を超える困惑に絣は完全に静止する。確かにサクラといい獣といい、内に秘めた本性が外面と吊り合わないことは知っていたし、怖ろしい虎型妖怪のミケは人化すると小柄で活発そうな少女だった。が、この花乃は。現れた本性は斜め上どころか地平線の彼方だった。
 
 「あなたも聞きたいのよねっ、絣ちゃん♪」
 「へっ!?」
 「んーんみなまで言わなくていいのわかってるから! あなたも馬頭ちゃんとおんなじ気持ちなのよねっ! だいじょうぶよ私そういうのキライじゃないわ、いくらでもこいっていうならいくらでも好きなだけ注いだげるっ! さあ、きて……♪」
 
 我に還ると状況は最悪だった。絣はぞわぞわと鳥肌が立つ全身を抑え込んで室内を素早く見渡し、どこに退路があるか確認する。花乃の真後ろ。その花乃はいまや四つん這いの荒ぶる雌豹のポーズでじりじりとこちらに近づいてきていた。
 わりとマジで怖い。絣は深刻に命の危険を感じぶるりと震え、さらに後退して角に陣取り膝を叩いて立ち上がる。そんな絣を見る花乃の眼はもう完全にイッており光が消えている。本気でやらなきゃ本気でやられる!
 絣の判断は早かった。悪魔の契約――
 
 「そそそそ槍符ねねねね『ネガ・グングニル』ッ!」
 「だぁめ♪」
 「っひゃあ!?」
 
 もう毒は室内全体に回っていた。というよりもともと花乃の家である。花乃という妖怪がもっともその力を発揮できるフィールド――絣の全身が麻痺して崩れ落ち、腕がだらんと垂れ下がる。当然そんな状態で槍を使えるわけがなく先日の獣戦と同じように矛先はどこか遠くへ掻き消えた。
 なにもできぬままじわじわ脅威が近づいてくるのを見るしかないのは恐怖そのものである。四つん這いの花乃は風呂上りの胸元からいまにも乳房が零れそうで、凄艶そのものというか見てられない。眼を瞑ることもできず絣は絶望のどん底に落ちていく。
 
 「……――ぁはン……♪」
 「ひぃっ!?」
 
 絣の頭を貝のように両手で支え、口づけのように花乃の顔が近づく……
 
 「わ、わっ……ぅわあああぁぁぁぁああああああッッッッッ!!!!!」
 「――♪」
 
 お決まりの走馬灯が駆け巡る――
 闇を薙ぐ爪が見えた。
 最高の毒が注ぎ込まれる刹那、絣は反射的に左手を振るっていた。
 
 なにが起きたのか誰も見て取ることができない。絣は注ぎ込まれた毒に意識を根こそぎ消し飛ばされ、花乃のからだは宙を舞って室内の反対側の壁まで吹っ飛んでいた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「ということがあったんですよもうっもうっもうっもうっ!」
 例の教会。長椅子に並んで座り、絣はシスターにぶちまけている。
 「ほんとに命の危機を覚えましたよ、起きたときには花乃さんは元に戻ってぶすっとしてるしっ馬頭さんは魂抜けちゃったみたいにぼんやりしてるしっ、今朝は気まずすぎて一刻も早くここにきたくてたまりませんでした! 笑わないでください! だってだって想像もつかないじゃないですか散々喰らってた毒がものっそ手加減した結果のものでっ、本気出したらあんなっ。ぶるぶるっ、ううーっもうやだ思い出したくない思い出したくない、ぐすっ、涙出てきた……」
 
 シスターは顔を背けて手の甲で口許を覆い、時折肩を震わせて噴き出すのを堪えている。腕をぶんぶん振り回しながら話す絣が可笑しいやら可愛いやら、なんだかんだで左手には術式、どんな顔して施し施されたのか想像するだけで笑える。
 
 「花乃さんを許してあげてください」とシスターは嗜める。「本質的に能力を制御することのできない種族ですから。旧都ではなくあそこに住んでいるのも、そのためなんですよ。ずうっと我慢して……。最近になって、ようやく壁を越え始めたんです。絣さんのような方がそばにいても、毒も障気も完全に抑え込んでいられるようになったんです」
 絣は少し黙った。そうして考え考え言った。
 「――あの、シスターさんは……もし違ってたらすみません、もしかしてあの家の」
 
 みなまで言うまえに、シスターの指先が絣の唇に当てられていた。眼を伏せて静かに首を振る彼女に、絣はなにも言えなくなった。
 けれどその哀しげな仕草で、絣は自分の拙い勘が当たっていることを知った。
 
 「告解でしたら、話していただけませんかと言いました。でも、ごめんなさい、私の話を聞いていただけるでしょうか」
 
 絣が頷くと、シスターはベールを外して膝の上に乗せた。その下の赤い一本角と、男のように短い黒髪が露になった。どこか濁りのある碧眼が絣を見た。積み上げられつつある石の塔を見ているような、儚く危うげな印象を与える眼だった。
 
 「花乃さんは優しく接してくれます。けれど私は、花乃さんや、他のみなさん……土蜘蛛さんや橋姫さんが地底へ逃れてくることになった、直接の要因です。食人鬼でした」
 絣はじっと続きを待った。
 「人里の人間さんを食べていたのです。もともとは現地獄の鬼でしたが、出奔しました。そのときにお役人さんもひとり殺しました。
 その頃、私の心はなにもわからない場所にありました。闇黒の内側に囚われて、自分を取り戻すことができなかった。それでも自分がなにをしているかはわかっていた。……そのときにどういう風に心が動いていたか、おぞましくて言い表すこともできません」
 
 唇に当てられた指先がひくついた。碧眼に薄くかかる睫毛も。絣は恥部を曝け出す者の震えを見た。
 シスターがことばを切ると、塊のような静寂が教会に満ちた。
 
 彼女は俯いた。「鏡を見ると、胸が張り裂けそうになる。本性がそこに映っているから」顔を上げ、絣の眼を見て言った。「絣さんの眼は澄んだ鏡のようです。私がどれだけ怖ろしく思っているのか、あなたにはわからないでしょう。でも、もう少し……私を見ていてくれないでしょうか」
 おねがいします、とシスターは懇願した。
 自分の怒りを知っている絣は自分の眼を鏡だなどとは思えなかった。が、それでもシスターを見つめた。どう反応していいのかさえわからない惑いの時間に、固まったようになってときを待った。
 
 シスターは打擲に耐える子供のように身を丸めた。
 
 
 
 橙は気配の残り香を追い、路地裏を抜けた。不意に視界が開けた。
 
 「……教会?」
 珍しいものもあるものだと思い、扉を開いた。
 
 暗い堂内に、外の明かりが細く射し込んだ。並べられた長椅子の、いちばん後ろの一列を照らした。眼を細めて暗がりに慣れさせると、すぐになかの様子が判るようになった。
 前列に誰かが座っていた。ただひとりでマリア像を見上げて、祈るでもなく眺めていた。橙はそこまで行った。
 
 「……絣。どうしてここに?」
 「橙さま?」
 
 絣は立ち上がって頭を下げた。少し休んでて、と絣はどこかぼんやりと言った。橙は首を傾げながらも、あたりを見渡した。
 
 「他に誰かいなかった?」
 「……えと。いえ」
 「絣?」
 「あのっ」絣は急き込んで、「地底にはまだいられるんですよね? その、なんて言ったらいいのかわからないですけど、諦めないでください。絶対に最後までやってください。必ず会えますから。ただちょっと時間が必要なだけですからっ」
 橙は不思議な思いで弟子を見つめた。
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2012/05/13 15:01 | Comments(0) | 東方ss(長)

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