わりと本気で終わりが見えてこずわりと本気で途方に暮れている夜伽SSにタマラナクなったのでヒャア我慢できねえ! 掌編だァ! 楽書きだァ! シリアス書いてると逃避エネルギーのパワーが半端ない。
KORNの新譜出るまえにとは思ってたのにこれじゃ無理そうだ。諦めてクオリティ向上に努めます。
魔理沙と咲夜が駄弁るだけ。いのせんとばいなんちゃらの内容を前提にしてますが所詮10kb程度なので勢いでイケるんじゃないかと(ry
KORNの新譜出るまえにとは思ってたのにこれじゃ無理そうだ。諦めてクオリティ向上に努めます。
魔理沙と咲夜が駄弁るだけ。いのせんとばいなんちゃらの内容を前提にしてますが所詮10kb程度なので勢いでイケるんじゃないかと(ry
いやな予感はしてたんだ。
「よーおパァチュリィィーッ! 早速だけどF1棚の魔道書根こそぎ全部死ぬまで借りてくぜぇ!!」
「召喚『最強の猫いらず』」
「魔理沙! 一年ぶり! すごく会いたかったっ!」
「ウワーッ咲夜が復帰してるいつの間にかァーッ!」
「……やっぱり安定感が段違いね咲夜がいると」
気がつくと図書館から引き離されて、静止した時間のなかで咲夜の部屋に連れ出されていた。ちくしょう、ここんとこすごく楽だったのになあ……本泥棒……
美鈴と小悪魔とパチュリー、あとは非常用にフラン。そういう風に対策して魔術を組んできたから、久々の時止めにはちょっとどうしようもなかった。だいたいなんの作戦もなくいきなり咲夜と向き合ってどうにかできるやつなんか、人間じゃせいぜい霊夢くらいだろう。というか帰ってきたとき全治三ヶ月とかじゃなかったかコイツ。メイドに戻れるまでまだ時間かかると思ってたのに。そう考えて咲夜の手を見ると、どでかいギブスを嵌めたまんまだった。掃除とかどうしてるんだ。口でモップくわえたりとかしてるのか。
「私クラスのメイドともなれば気を開放するだけでモップのほうで動いてくれるものよ」
「おまえはなにを言ってるんだ」
「冗談は置いといて」
背中に腕を回されてぎゅーっと抱きすくめられた。
「久し振り、魔理沙! すごくすごく懐かしい……ほんとに帰ってこれたんだって……帰ってこれてよかったって思う」
「ギブスが肩甲骨に食い込んですごく痛い」
やたらと感慨深そうな咲夜だが、私はといえばフランのバースデイパーティのときにレミリアに背負われて帰ってきたコイツを見てるので、いまさら感しか湧いてこない。というかコイツはぶっちゃけどこ行ってもしたたかにやってるだろと思ってたしなあ。
「うん、まあ、元気してるみたいでよかったよ。ていうかメイド長がこんなとこで油売ってていいのか? 仕事してこいよ仕事」
「ええもちろんそのつもりよ。いままさに図書館で一仕事終えてきたところだし。侵入者がくるたびに召喚されるからいっときたりとも気が抜けないの」
「まったくパチュリーも人遣い荒いな!」
「ホントにね! お給料は雀の涙だけどね!」
以前は咲夜の私室は個室だったのに、いまは相部屋になってるようだった。咲夜の私物はほとんどなく、ルームメイトの妖精の持ち物らしい、なんだかわからん小物で床がごっちゃになっていた。私にも負けず劣らずの蒐集癖らしく、アンティークみたいな怪しげな壷とか、人里で扱ってるような色取り取りの反物とか、おっと、あれはアリス製の人形じゃないか? そんなものがそこかしこに転がってる。まえの咲夜の部屋は無愛想もいいとこだったので、私としてはこっちのほうが落ち着くなあ。
まあ、一年も家出してたメイドに個室をあてがうほど余裕もないよな、紅魔館も。他のメイド妖精への示しってこともあるだろうし。
「毎晩おはなしに付き合わされて、ますます寝不足になっちゃってね。ここに来た頃お世話になってたひとだから、全然遠慮もないし。すっかり妹扱いで」
「瞳孔開いてんぞ。時間止めて眠れよ」
「眠りながら能力を使えるわけないでしょ。休むために時間を止める、で、眠ると時間が動き出す。あらまあ素敵なジレンマ。体力回復にはあんまり役に立たないのよね、これ。でも実を言うと腕の骨はすっかりくっついてるの」
「なんでまだギブスつけてんだ!?」
「えっと……もうちょっと心配されててもいいかなって……」
そう言って咲夜はぽっと頬を染めて顔を逸らす。なんてやつだ。あれか、末の妹は甘やかされて育つとかそういうやつか。紅魔館住人総姉みたいなもんだからな歳的に。妹がいちばんしっかりしてるってのがアレだが。
「でもほんとに魔理沙がきてくれて嬉しいのよ」
「私は本借りにきただけなんだが」
「幻想郷にくるまで周りは年上ばっかりでね……魔理沙とよく話すようになってから、まるで妹ができたように思えて。すごく新鮮な感じがしたわ、私を妹扱いするみんなの気持ちがわかったというか」
「おまえら姉か妹かって視点でしか相手を見れないのか」
「妹分補給ぅうう」
「ギブスが肋骨に食い込んですごく痛い!」
後ろから抱きついてくる咲夜の顔に手のひら押しつけてどうにか遠ざける。まったく勘弁してくれってもんだ。収穫なかったからさっさと帰るぜ! と箒を掴むと、捨てられた子犬みたいな眼でこっちを見てきやがる。おいおい、そんな眼で見つめられると――
あいにく私は猫派なのだ。犬には昔ばくりとやられた思い出があるので敵でしかないわけだ。構わずに魔力を開放して、窓ガラスを突き破って寒空の下へ飛び出す。
「フリーズタイム!」
「あっ、くそっこのヤロオ!」
窓を抜けるとそこは咲夜の部屋だった。なにを言っているのかわからんと思うが私もなにをされたかわからんかった。いや普通に時止めて方向転換されただけだな。もうちょっと! もうちょっとおはなししましょう! と懇願する咲夜に八卦炉を突きつけて後退。間合いを取ってじりじりと室内をぐるぐる。妹分に餓えた紅魔はまったく天然危険物でしかない。ソースはレミリア。
「そうだ、あいつは? レミリアはどうしたんだ?」
「幻想郷中に挨拶回りに行かれてるわ。なにせ一年間ずっと留守にしていたものだからね」
「おいおい、ご主人様がお出かけしてるってのに、従者は置いてけぼりかよ。悪いことは言わないからいますぐ追いかけてけよ、野良魔法使いに構ってる場合か?」
「あなたは野良魔法使いなんかじゃない。私の妹よ」
「ひとを勝手に妹認定するなよアホか! 私は生まれてこのかたずっと長女だ! いまさら姉なんぞ欲しいとも思わんわ! そうじゃなくてだな、なんだ、というかホントにレミリアについてかなくていいのか?」
「だ、だって……は、恥ずかしく、て……」
急に覇気を失って俯いてしまう咲夜。アーはいはいごちそうさまごちそうさま。なんだか急にばかばかしくなっちまって私も八卦炉を下げる。ちょうど真後ろにあったベッドにひょいと身を投げて、頭の後ろで腕を組んであくびをひとつ。
「私も暇人じゃないんだ、一時間もしたら帰るぜ」
言うや否や紅茶とスコーン、苔桃のジャムが出てきた。香ばしい匂いに、ちょうど小腹が空いてくる。私の胃のなかまで時間操作でもしたか。まったくとんでもないメイドだ、つくづく。
一年かー。まあ一年もあればいろいろあるもんだ。咲夜が旅してきた外の世界の話はなかなか面白いもんだった。私も機会があれば紫のやつを出し抜いてスキマ使って、思う存分飛び回ってみたいもんだ。
「ミサイルが飛んでくるからやめておいたほうがいいわ。お勧めは超低空ステルス亜音速巡航よ」
「にとりに頼んでみるかー」
そんな感じで溜まりに溜まった世間話、一時間じゃとても話しきれんなこれは。こっちもこっちでなんにもなかったわけじゃないしな。
「なんか姉になったみたいなんだよなー」
「え、霊夢の?」
「なんでそんなナチュラルにおかしな話になるんだよ! リアルの話しだっつの、妄想じゃないよ! 実家だ実家!」
「魔理沙の実家って確か――」
「うん、人里の。もう何年も顔も見てないけど、慧音から聞いてな。まあ、親父とお袋、仲がいいみたいでよかったと思うよ。なんか複雑な気分だけどさあ」
ううん、さくっと話そうと思ってたのにうまくいかないぞ。自分の声音が一段階重くなったみたく感じてうんざりする。まあ咲夜だしいいかと思ってそのまま話すことにする。
「なんつーかなあ。いまさら親とか関係ないだろって感じもするしさ、関係なくもないだろって感じもするしさ、ホラ、私ってあんたらにとって結局なんだったんだって感じもするし、ああじゃあもう私がいなくても一安心だなって感じもするし、うーん、まあ心穏やかじゃいられないってやつだ。どう折り合いつけるかなーって困ってるとこ」
「ふんふん。仲直りできないの?」
「ちょっと無理だなー。向こうはまあ、簡単に言えば私が魔法使いになることがイヤなわけでさ。でも魔法使いやってんのは私にとってものすごく大事なことでさ。そこは仕方ないわけだ、お互い思うところがあるわけだからさ。価値観が違うんだ残念ながら。あっちは私が『改心』して、懺悔告解して、『過ち』を認めて戻ってくれば全部解決、と思ってるわけだけどほら、『過ち』だと思ってないもん私。譲れないとこがあるわけで。だからつまるとこ――んー、まあとにかく無理無理」
「そっか、無理かあ」
あんまり深く追求してくれないでいるのがありがたい。紅茶をぐいと飲み干してスコーンを一口。ふーっと一息ついてみると落ち着いてくるもんだ。そうは言っても『妹』ができたみたいだって事実は変わらんわけで、私のよくわからんとこで自分と同じ血の女ができてるってのはなんかこう、
「胸がもやもやするんだよなー」
「うんうん、なんとなくわかるわそういうの」
「わかってくれるかー」
「家出から一年ぶりに帰ってきたら四百歳以上年上の義妹がふたりもできてたとかもう困るしかないわよね」
「おまえはいったいなにを言っているんだ」
だからまあ、妹らしいわけだ。レミリアとフランみたいに仲睦まじい――睦まじい?――ようなことにはならないだろうな、と思うわけで、なんだか始まるまえの未来をひとつ生まれるまえに捨て去ったような感じがしてもやもやするわけだ。重度蒐集癖持ちの私としてはこう、大事なグリモワールを一冊タダで手放したような感じがするようなものなのだ。
「あんまり蒐集癖とか関係ない気もするけどな……」
自分の選択が間違ってるなんて思っちゃいない。でも違う道を選んでいれば持ち得たかもしれない未来の景色がありありと見えてくると、いまの自分に問いかけたくなる。おまえ、それでよかったのかよ? あっちに行けばもっとおいしい幸せが待ってたかもしれないんだぜ?
幸せなんているもんか。いままでずっと自分のしたいことしてきたし、これからもそういう生き方を変えようなんて思わないんだ。死ぬほど辛いことも死ぬほどあるけど、魔法使いにならなければ空を飛ぶことさえできなかった。澄ました顔してふわふわ浮かんでる霊夢を下から見上げることしかできなかった。
それでも……ばっさり切り捨てられた可能性の先に持ち得なかった血の絆があると思うと――
「いいんじゃない? こっそり会いに行けば」
とかなんとか悩んでるのにコイツはさくっと言ってのけやがる。
「ええ? おいおい、そいつはあれだよ……なんかこう、建前みたいなものがあるだろ。妹(仮)からしてもこう、迷惑というか、微妙だとか、そんな感じするだろーし」
「そーお?」
「いやわからんけど……こっそりとかなあ……」
「お勧めは超低空ステルス亜音速巡航よ。ダンボールとドラム缶も忘れないで」
「もうカムフラ率高いんだか低いんだかわからないよなそれ?」
この館の住人はどいつもこいつも勢いだけでなんとかしようとしやがるから困る。勢いだけで突っ切ろうとした挙句ものの見事に術中に嵌まって輝夜ではなく永琳とドンパチやってた永夜異変。こいつらはそういうことにまず反省というやつをしない。
「うんまあ実際、私には血の繋がった姉妹っていないからよくわからないんだけれど。でも四百九十五年間姉やってるベテランお姉様だったらこう言うでしょうね。『妹に興味のない姉がいるとしたら、それはもう姉じゃなくて役立たずのクズよ』」
「アイテテテ」
「興味あるから悩んでるんでしょ?」
そりゃ確かにそうだ。絶縁された顔引っ提げてのこのこ会いにいくのは、なんというか格好つかないわけだ。いまさら気にする世間体もないけど、『妹』が私を見てどう思うかってのは気にしてしまう。でもやっぱりこう、いっぺん見たくて見たくてたまらないって衝動も胸のなかでぐるぐるぐる。ジレンマだけで巨乳になっちまいそうだ。おっぱいのなかに詰まってるのは夢ではなく苦悩であるbyさすらいの魔法使い。
「魔女なんでしょ?」
「ええ?」
「魔法使いと魔女の区別がいまいちつかないんだけれど。だったらいいじゃない。ガラスの靴をプレゼントするお節介の魔法使いヅラしていけば」そう言って咲夜はぱっと両腕を開いて、「魔理沙の妹だったらそういうの好きそうじゃない? というか、そういうのがキライな女の子って実際、いる? 妹に夢を与えてあげるのも姉の使命じゃないかしら」
「姉のハードルがものすごくインフレしてる気がするんだが気のせいか?」
まいったな、いろいろ悩んでるのがばかばかしくなってきたぞ。別に望んで姉になっちまったわけでもないけど、そうだな。ときにはすっぱり諦めて現状を受け入れてしまうのもいいのかもしれないな。
うーん、そっかー、使命か。使命だったら仕方がないな。どうやらここは恥を忍んで妹のために一肌脱いでやるしかないみたいだな。まったく姉道は地獄だぜ!
「つくづく魔法使いでよかったと心から思うな!」
「そういう使命が一生続くんだから姉って大変よね!」
「そのとおりだなまったく! 全世界の姉先人たちを心から尊敬するぜ!」
結局窓から見える寒空が茜色に変わるまで私らはそんな感じで駄弁り続けたのだった。コイツといると素で時間が加速してるみたいに感じるから困る。まあ。無事に帰ってきてくれてよかったと心から思うよ。
おかえり、咲夜。
あと借りパクは見逃してくれると助かる。
「バッドレディスクランブルこんばんは! 霊夢! 私の帰還よ! さあ一年分溜まり溜まったぶんだけお姉ちゃんに甘えなさい遠慮せず思う存分夜が明けるまで!」
「いますぐ帰れ」
おわれ
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ほのぼのした日常に帰ってこれたみたいですが、困惑も多そうですね。
まぁそりゃ400以上も年離れてる妹が増えりゃ誰だって困惑するでしょうがw