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2025/02/08 02:55 |
そらとあまみ 31
オリジナル日常登山微百合ぐだぐだ系ss。可愛い女の子が描けません! 助けてください!(半ギレ


普通のssに関してはいつも終わりを明確に決めてから妄想を広げて書くのですが、このssについては終わり方を完全に放棄しているので、終わりません。
たぶん空が老婆になるまで書ける。ああ引き伸ばしってこういう感じに行われるのだろーなーと思うのだけれど、まあ、日記みたいなもんです。
普通のssも書きたいのだがネタがない。可愛い女の子が描きたい。あれもこれも書きたくて悶々とする毎日。そして今日もダクソで不死街ケツを掘られる。勝率が上がりません! 助けてください!(半泣き

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 中学では、すべての生徒がなにかしらの部に所属していなければならなかった。自由意志ではなく強制だ。生徒の自主活動ではなく、授業の一環としてというスタンスで、天見にはそれが億劫でならなかった。そして、山岳部やワンダーフォーゲル部、探検部などはなかった。部員が集まらなかったのと、事故の危険性があるということで、廃部になっていたのだった。
 にこにこと期待を篭めてこちらを見つめてくる紡に、天見は不機嫌そのものの視線で応じた。しかし、紡がその程度のことで退く女ではないということも、天見にはわかっていた。部活動紹介のプリントに眼を落とした。女子バスケ部……

 「二年と三年がひとりずつだって。他の部よりは気軽だと思うなーあたし! 姫ちゃんがサッカーとかテニスとかソフトボールとかやりたいんなら別に引き止めないけど。でも、どれもこれも部員たくさんだよぉ?」
 「うるさい」
 「文化部いく? 登山のトレーニングにならないまま、時間を費やすことになると思うけど。からだ動かせないのはツライよねぇ……幽霊部員って手もあるけど、家に帰ってすることある?」

 天見は忌々しげに紡を睨んだ。




 佐田氷月は椅子にもたれ、気だるげに背筋を逸らし、ぼんやりと天井を見つめた。
 ようやく授業が終わってくれたが、部活に行く気力を搾り出すのにもう少し時間がかかりそうだった。全身の血に鉛が混じったように重くなって、溜息は諦観を含んで煙い。別に、バスケが厭になったわけではない。ただひとりの三年として部長になって、あれこれ悩まなければならないのが面倒なのだ。

 「なんかのオマケで誰か入っちゃくれねーかな……」

 近頃はマンガだかアニメだかの影響で興味を持ってくれるやつもいるにはいるが、練習についていく気がないのか、男子バスケ部のマネージャーにばかり流れていく。
 中途で退部する連中ばかりだったとしても、ひとまず何人かいてくれさえすれば、廃部は防げる。試合なんかは、助っ人を掻き集めてくればいい。根っから断れないタチの、生徒会の葛葉とか、人が良すぎて損ばかりしているサッカー部の柊とか。ひとりでもコンスタントに試合に出れるやつが入部してくれればいい。実力の有無はともかくとして。

 ごそごそと窓を開け、何気なく階下を見下ろすと、体育館のほうにすたすたと駆けていく根岸渓の姿が見えた。ふっと目敏くこちらに気づいて、声を張り上げられる。
 「ぶちょー! 氷月部長ーっ!」
 ぶんぶんと手を振られてわかったわかったとひとりごちる。「すぐ行くー! 先に始めてて――」

 しかし、態勢を立て直すにはまだもう少しだけかかりそうだった。




 「一年B組の鵠沼紡でっす!」
 「……同じく、姫川天見です」
 渓は感動に打ち震えた。「――お、おおおお!」

 念願の新入部員である。それもふたりも。去年の新入部員は合計六人、渓以外の五人はすぐに飽きてやめてしまっており、ぬか喜びになる可能性だってあるとわかってはいても、やはり待ち望んでいたものがやってくるのは嬉しくてならない。ぐっと拳を握り締めてガッツポーズ、これでとにかく廃部だけは免れる。
 特筆すべきは鵠沼と名乗ったほう、一年生にして既に自分よりかなり体格がよく、172センチある氷月よりもさらに背丈が高い。180近い? 見るからにセンターにうってつけ。部長がポイントガードに回ることができれば戦力の大幅アップは必至、この子は別の部に逃がすわけにいかない!

 「バ、バスケの経験は……?」
 「小四のときからストバスやってます!」
 「私は初心者」
 「でも姫ちゃん運動神経いいもんね! 問題ないって! あ、あたしポジションはセンターです!」
 「よしっ。よし!」

 とうとう運が向いてきた。経験者ならそう容易くやめたりしないだろう。姫川さんのほうは自分より背が低いくらいだし、髪染めてるし、眼つきが悪くてなんか怖いけれど、差し引きはむしろプラスなくらいだ。

 昂る心を抑えて深呼吸をひとつ、「私は二年の根岸渓です、ポジションはフォワード。三年の先輩がもうひとりいるから、部員はふたり含めて四人になります。本格的な挨拶は部長がきてからやるけど、ウチの部は弱小だけどやるからには本気で大会優勝狙ってくんで、これからよろしくお願いします! わからないことあったらなんでも聞いてね!」
 「よろしくお願いしまっす!」
 「……。お願いします」

 天見は溜息をついた。……暑苦しい。適当に時間潰せれば、私はなんでもいいんだけど。部活の上下関係とか、人間関係とか、面倒くさいだけだ。はやくも気が滅入ってしまい、紡に引き摺られるがままやってきたことに後悔する。なにやってるんだ私。と。




 東北本線で南下し、花巻で乗り換えた。仕事先に申請した休日には、まだ余裕があって、神奈川に帰るまえに、寄っていこうと思っているところがあった。釜石線で遠野駅までゆく。
 晴れ空がけぶるように白く眩しく、空は眼を細めた。駅前のロータリーを伝い、河童の銅像に軽く頭を下げて、バスに乗る。巨大なザックに少し驚かれたが、慣れたことだ。運転手ににこりと笑いかけて、目的地が正しいかどうか確認した。

 (ここへくるのは初めてか。……早池峰とか、登ってみたい山もなくもないけれど。今回はひとまず後回しだな)

 窓に頭を預けて、何気なく外に眼を向ける。震災の爪痕は、さすがにもう、ほとんど残ってはいないように見える。少なくとも外面は。数年前の災厄がどれほどのものだったのか、当事者でない空には想像もつかない。軽く軋む胸に息を細め、眼を閉じる。
 国道340号線を北上し、しばらくして逸れる。がたがたと、舗装の行き届いていない狭い道をゆき、寂びれたわかりづらいバス停で降りる。見渡す限りの畑のうえに北上山地の相貌が水墨画のようだ。そして、ゆく。

 (連絡はつけてきた。北海道土産も買ってある、一応。柄にもなく緊張してるのがばかばかしいな。ったく、何年振りに会うんだっけ……山やめる直前だから、もう五年になるのか……)

 都会暮らしが一度は憧れる光景が広がっている。だだっ広い畑に、ぽつぽつと点在する古く大きな屋敷。歴史と風情が一緒くたになって、懐かしい匂いがする。山から降りてくる冬の雪の香りだ。春の温かみに冷気と混ざり合って、ひんやりと心地がいい。
 車の通りもなく、虫の音はむしろ静かだった。侵し難い静謐。古き良き――みたいなのはこんなのなんだろう、と、空は緩んだ思考を回す。このあたりが……死んだ父親の生家だった。

 「親父はここで生まれた。でも、実感はない。あたしが育ったのは茅野だった……」

 声に出して呟く。
 岩手から長野へ。
 親戚連中はみなこのあたりにいる、はずだった。しかし、会ったことがあるのは叔母だけだ。その叔母にしても、五年まえに一度話しただけで、そう強い繋がりがあるわけではない。里帰りもしたことがない。父親――櫛灘文太は、まるで絶縁されたかのように故郷へ近づかなかった。結局、海外の山で雪崩に遭って亡くなり、遺体すら帰ってくることはなかった。

 集落から離れた、一軒のひときわ大きな屋敷に近づく。全体的なつくりは古びていたものの、やはり震災を経てところどころ補修されたのだろう、遠目に見ても塀や一部の壁は真新しかった。空は表札を確認した。『櫛灘』、隣り合って『佐藤』。
 インターホンはない。敷居のまえで声を張り上げた。「すみません――!」

 とたとたと軽い足音が伝い、近づいてくる。戸ががらりと開く。見下ろすと、敷居の上に小さな小さな少女が怪訝な表情を浮かべている。天見よりもなお幼い。小学校の、一、二年生くらいか。

 「こんにちは」
 愛想笑いして、挨拶すると、「……こんにちは」
 「初めまして。……怪しいもんじゃないよ。雪菜さんはご在宅?」
 少女はこくりと頷き、振り向く。「ママ――!」

 鈴のような声が響く。空は待ち、思った以上に冷静な自分に気づいた。あたしも年取って、少しは落ち着いてきたってことなんだろう。登山のザックを背負ったままだからかもしれなかった。五年まえは着の身着のままで会っていたが、今回はあたしが属するものを背負っている。肩と腰に食い込む重荷が、これ以上ない心強い味方のように思えた。

 雪菜がやってくると、空は丁寧に頭を下げた。「お久し振りです。雪菜さん」
 雪菜は眼を眇めるようにして空を見つめた。
 「空です。櫛灘空……」
 「――空さん」雪菜はぎこちなく微笑んだ。「ごめんなさい、わからなかったわけじゃないのよ。でも、ずいぶんと変わってしまったものだから……」
 「ええ、わかってます。あたしもこの五年でいろいろあったんで」

 雪菜は玄関に降り、空の肘のあたりに触れた。空とほとんど目線が変わらないくらいの背だったが、どこか見上げるように、空の顔を見つめていた。

 「ありがとう、きてくれて。歓迎します。どうぞ、上がって」
 空は頷いた。




 佐藤雪菜は四十六歳、旧姓は『櫛灘』――空の父親である、櫛灘文太の妹だった。空の叔母にあたる。しかし、ふたりはまるで似ていなかった。どこか痛いくらい鮮烈なところがある空に比べて、雪菜は全体的な印象も、頬から顎にかけての線も、黒というよりは琥珀に近い眼の色も、みな物静かで穏やかな空気を持って柔らかだった。実際、血の繋がりがあるのかどうか、空にはわからなかった。空の出生については、不自然なところがあまりにも多すぎた。

 「遅くなってごめんなさい、雪菜さん。これ」

 向かい合って食卓に座り、オレンジ色の仄暗い照明の下で、空は古い写真の束を差し出した。雪菜は受け取り、一枚ずつめくっていった。
 北海道からわざわざ鈍行で南下してきたのは、このためでもあった。もともと、頼まれていたことだった。五年もまえに、もし家を出ていった兄の記録があれば分けて欲しいと、頭を下げられていた。その際に、父親が実家から絶縁同然となった理由も聞かされたのだ。それは空が山から離れた原因の一端でもあった。

 「幸せそうね。兄さん」
 空はくすりと笑った。「山の写真しかなくてすみません。親父、下界じゃカメラなんかほとんど使わなかったし、亡くなってから山行記録以外、処分しちゃったんで。茅野から引っ越して、神奈川にきたとき……」
 「充分よ。空さん、ありがとう。あら、この方は?」
 雪菜の手元を覗き込むと、いまよりも三十は若い杏奈の父親が、文太の隣でうなだれていた。バテきって、いまにも吐きそうなほど顔を青くしている。空はにやりとした。「篠原武士ですよ。親父のザイルパートナーだった……ご存知ないですか? 山岳会を通じてあたしに連絡くれたとき、彼が仲介してくれたと思うんですけど」
 「ああ……! 兄と同じ山岳会の方ね。この写真、兄もすごく若いですね」
 「篠原はあたしが生まれるよりもまえから親父とザイルを繋いでたんです。それこそ、師弟って感じで。たぶん、あたしよりもずうっと親父のことを知ってる男ですよ、彼は……」
 「ひとり娘の空さんよりも?」
 「下手すりゃ家族よりも深く繋がっちまうのがザイルパートナーってやつです」
 「そうなの。不思議なものね……」

 写真のなかの櫛灘文太がみるみるうちに歳を取る。少年の面立ちが徐々に掻き消え、青年から男へ。空が生まれたあたりから、その顔に人生の悲哀を味わった者の影が加わる。あどけなさが旋盤によって削り取られ、傷が痛みに変わるにつれ、決して奪い去られることのない精悍さが滲み始める。ひとりの山屋の成長。その記録。
 文太は享年四十六歳。そのタイム・リミットに近づいていく。葬儀に本人の亡骸はなかった。雪崩に飲み込まれ、いまもパキスタンの山中に埋まっている。私立高校の教師だった彼の通夜には、空が驚いてしまうほど、たくさんの教え子が集まった。教師としてどういう感情を抱かれていたのか、空には知る由もなかったが、少なくとも笑っている者は誰ひとりとしていなかった。

 「親父は父親としては失格だったかもしれない」と空は言った。「あたしを置いて、ひとりで逝ってしまったんだから。母親もいなかったのに。自分の山行に殉じて、中途で子育てを放棄してしまったんだから。それはどう言い訳しても赦されることじゃないです。無責任って言ってもいい。誰に責められても言い逃れできない厳然たる事実だと思います。
 でも、娘を抱き締めない父親じゃなかった。養育費だけ稼いでいれば義務を果たしたことになると考えているような男でもなかった。体罰を振るわれたこともないです。分別がなくて頭の悪い娘と、納得いくまで夜通しとことん話し続けるような、不器用なりにいつもどうにかしてもがいてる人間だった。他の親と比べることなんてできることじゃないから、娘のあたしに言えるのはそれくらいですけど。あたしは親父が好きでした」空はしめやかな微笑を唇に浮かべた。「いまも残っている事実は、まあそれくらいですね」
 雪菜は濡れた吐息をついた。「そう」

 沈黙が落ち、雪菜の手が止まった。じっと写真に眼を落とし、時折唇を揺らして、眠り込んでしまいそうなほど穏やかな静謐が満ちた。写真にではなく、思い出を見ているのだと、空にはわかった。口出しできるものではなかった。彼女がなにか言い出すまで、空は待っていた。
 視界の端にちらりと動くものを見て、空は振り返った。敷居の向こう側、戸に隠れるようにして、玄関で見かけた雪菜の娘がこちらを窺っていた。空は微笑みかけた。少女はびくりとして、身を縮めた。

 雪菜は写真から顔を上げて言った。「水緒。いらっしゃい」
 少女はとたとたとぎこちない足取りで母親の元に近づいた。娘を抱え上げ、雪菜はしばらく時間を置いて、染み入るような空気に身を任せた。そうして言った。
 「あなたの従姉の……空さんよ。私の兄さんの大事なひとり娘」

 少女は鏡のように澄んだ眼で空を見つめた。いっとき、空は押し潰されるような圧力を感じ、狂おしいような感覚が胸を駆け抜けていくのを呆然とやり過ごした。子供と向き合うのは、怖ろしい。自分がなんの意味もない人間に成り下がったような心地がする。
 しかし、そういう感覚はもう何度も味わってきたものだった。空は素早く態勢を立て直し、静かに手を差し伸べた。「よろしく。水緒」

 従妹は頷き、おずおずと手を伸ばした。そうして空の手を握り締めた。
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2013/06/23 05:51 | Comments(4) | SS

コメント

新キャラが出てくると二部の始まりという感じがしますね。
新たな展開に期待しています。
posted by 無題 at 2013/06/23 16:39 [ コメントを修正する ]
夜麻産先生の……!バスケ小説が読みたいです……!!
posted by NONAME at 2013/06/23 20:14 [ コメントを修正する ]
1.長槍か特大剣軽ロリ攻撃で距離をとる
2.壁を背にする
3.激おこ4枚積み

氷月さん渓さんこっちでも登場に歓喜。このふたりなんか妙に好きです、特に後輩。
posted by NONAME at 2013/06/28 22:09 [ コメントを修正する ]
>>無題様
メモ帳的には実は四部目に入ってますw 新たな展開はなさげですが! 無駄に長いんですよ……ッ

>>2様
私のバスケの知識がスラムダンクと黒バス程度という(ry

>>3様
信仰キャラ育ててないせいか最近の勝利パターンがツヴァイ担いでケツの掘り合いかチェインばっかりです! 軽ロリの突きに合わせてロリスタしてくる強者に会うと土下座したくなります(汗
ネタの持ち合わせ的にふたりを使い捨てキャラにするには勿体なく……ッ
posted by 夜麻産 at 2013/06/30 00:35 [ コメントを修正する ]

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